Googleの教育AI「Learn Your Way」とは?AIで教科書を再定義する

矢野 哲平

目次

こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、AIを使った学習、いわゆる「AI×勉強」について触れます。

AIを業務に活用している方は増えていますが、最近では勉強に使う人も増えてきました。そんななか、GoogleからLearn Your Wayという教育向けのAIツールが発表され、海外で話題になっています。この記事では、このLearn Your Wayを軸に、AIは勉強に活用できるのかという点を掘り下げます。

この記事では、主に次の3つのポイントを解説します。

  1. Googleが発表した、教科書を再定義する「Learn Your Way」とは
  2. Learn Your Wayを取り入れた学習の効果(Googleの研究結果)
  3. 実際に使ってみた私自身の感想

Learn Your Wayとは?

Learn Your Way(直訳すると「自分のやり方で学ぶ」)は、新しい概念やテクニックではなく、Googleが開発したAIツールの名前です。今までにない名前の付け方で珍しいですよね。

これがどういうものかというと、簡単に言えば生成AIを使った新しい教科書ツール、いわばAI教科書です。

従来の教科書は、紙であれば内容は固定されています。誰が読んでも、何回読んでも書かれている内容は同じです。一方でLearn Your Wayは、読み手の年齢や興味に応じて内容が動的に変わる教科書です。形は紙ではなく、Webにアクセスして閲覧するWebページのようなものです。

教科書の中身はテキストと画像と図で構成されているのが一般的ですが、Learn Your Wayでは学習者の好みに応じて、スライド動画や音声、マインドマップといった形式でも学習できます。たとえば経済を勉強したいとき、テキストで学ぶこともできれば、視覚的に学びたければスライド動画で学ぶこともできます。

さらに、勉強を進めるなかでAIが学習内容に対するクイズを出してくれます。「今学習した内容を復習しましょう。〇〇とは何でしたか?次の4択から回答してください」といった具合に、理解度も確認してくれます。

つまりLearn Your Wayを使うと、従来の教科書とはまったく異なるアプローチで勉強ができるわけです。Googleが模索しているAIと教育の新しい形と言えます。

ちなみに内部では、LearnLMという学習用に特化したAIモデルが動いています。Geminiをベースに、学習用にファインチューニングされたモデルです。

どのような学習効果があったか?

学習者の属性や理解度に応じて教科書の中身を動的に変える。うまくAIを組み合わせてきたなと思いますが、気になるのは「実際に学習効果はどれくらい高まるのか」という点でしょう。これについてはGoogleから調査結果が発表されていて、論文でも公開されています。

実験では、Learn Your Wayで学習したグループと、通常のPDFリーダー(デジタル教科書のようなもの)で学習したグループに分けました。結果は次のとおりです。

  • 学習後のスコア:Learn Your Wayのグループが平均して9%高かった
  • 数日後の記憶力評価テスト:Learn Your Wayのグループが11%高いスコアを出した
  • 実験後のアンケート:「理解に役立った」「もう一度使いたい」といったポジティブな評価で上回った

Googleが開発したツールをGoogle自身が実験した内容なので、疑り深く見れば「本当にそうなの?」という見方もできます。ただ、教科書の内容が学習者に応じて動的に最適化されるのは、従来の教科書にはないAI教科書ならではのメリットだと思います。

使い方:誰でも無料で試せる

このLearn Your Wayは、誰でも無料で使えます。Google Labsという、まだ正式リリースされていないプロダクトを公開する場で利用できます。全部英語ですが、Chromeブラウザの翻訳機能を使えば日本語で問題なく使えます。

サイトにアクセスすると、現時点で16個の教科書があります。経済システム、人類の歴史、社会学、原子と分子、コンピューターサイエンスなど、幅広いトピックをカバーしているので、おそらくどれか一つは興味のある教科書が見つかると思います。

教科書をクリックすると、まず自分の属性を聞かれます。「あなたは高校生ですか?中学生ですか?」といった具合です。その内容に応じて教科書の中身が変わります。サンプルではパーソナライズ項目が中学生か高校生かだけですが、将来的にはもっと細かく設定できるようになるでしょう。

そして、学習目標をAIが設定し、内容に対してクイズを考えてくれ、要望に応じてスライド動画や音声コンテンツに変換してくれます。今は実験段階なので用意された教科書しか使えませんが、本来は学習者がアップロードした内容に応じて教科書コンテンツを作ってくれるようです。たとえば生成AIの論文をアップロードすると、それを教科書コンテンツに変換してくれる、というイメージです。

実際に使ってみた感想

私も経済とコンピューターサイエンスの教科書を試してみました。先に結論を言うと、学習体験は良いなと感じました。学習してすぐにAIが問題を作ってくれて理解度をチェックしてくれるので、学習効率が良さそうです。

個人的には、何か勉強するときはやっぱり本が好きなんですよね。ただ、学習者に応じて教科書の中身を動的に変えられるのは、AIならではの見逃せない機能だと思いました。まだ実験段階なので、ハルシネーションをはじめ課題は多いと思います。

それでも、家でLearn Your Wayで勉強して、移動中や通学中に耳で教科書の内容を復習する、といった活用アイデアが広がります。テキストで勉強するのが苦手で動画のほうが良いという人でも、内容を動画に変換できる。学習内容をテキストにも動画にも音声にも変換できるのは、生成AIを搭載した教科書ならではのアプローチだと感じました。

AI×教育の事例:アルファスクール

AIと教育の組み合わせは、最近事例が増えてきています。Learn Your Wayが出る前、アメリカで発表されたアルファスクールも話題になりました。

これは教育にAIを取り入れた新しいモデルで、午前中の2時間だけAIを使って勉強し、午後は勉強以外のワークショップに充てます。金融リテラシー、起業、屋外活動など、いわゆる勉強ではないライフスキルを学ぶ時間です。AIで学習そのものを高速化して個別最適化し、余った時間を子どもたちの個性を伸ばす時間に充てる、という学習モデルです。

アルファスクールの発表データによると、生徒は従来の学校の生徒よりも2倍の速さで学習でき、クラスは全国的に上位1〜2%の成績を収めているとのことです。教師はサポートに回り、AIによる個別最適化された学習を行うのが核となる思想です。現時点では私立としての展開が中心だそうです。

一方で反対意見もあります。ワシントンポストでは、教師の役割をAIで代替することへの懸念が指摘されました。アルファスクールでは教師がサポート役に回り、メインの教師役をAIが担うからです。ほかにも、AIを教師とした学校モデルの検証が不十分ではないか、そもそも年少の子どもがオンライン学習に耐えられるのか、といった疑問もあります。

AIは手探りな部分が多いですよね。業務へのAI活用も手探りですが、教育へのAI活用も手探りだと感じます。私がSNSでフォローしている現役教師の方には、AIと自動化を組み合わせて教師の業務負担を軽減する取り組みをされている方もいます。アルファスクールとはまた別のアプローチで興味深いです。

大人もAIで学べる

今回紹介した事例は子ども向けの話が中心でしたが、私たち大人にもAIを使った学習の入り口は開かれ始めています。

たとえばChatGPTやGemini。少し前に学習モードが搭載されました。チャット画面で学習モードに切り替えるだけで、AIが学習をサポートしてくれます。「プログラミングを教えて」「統計を教えて」と、勉強にAIチャットを使う新しいアプローチを試せます。

あとはGemini Notebook(旧NotebookLM)。Googleが開発するAIツールですが、最近、ユーザーがアップロードしたソースからクイズやフラッシュカード(暗記カード)を作れる機能が搭載されました。AIを学習に使いたい人には、このGemini Notebookがおすすめです。学習内容の理解、クイズの作成、さらにポッドキャストも作れるので、移動中の復習用教材を自分で簡単に作れます。ソースを上げるだけで暗記カードやクイズを作ってくれるツールはなかなかありません。Learn Your Wayとあわせてチェックしてみてください。

企業でも、社員研修にうまくAIを使えば研修効果を高められると思います。この辺りは企業の研修担当の方の話をぜひ聞いてみたいですね。

まとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

  1. Googleから実験的に教科書AI「Learn Your Way」が公開された
  2. 学習者の属性や興味に応じて教科書の内容をAIが生成するツールで、誰でも無料で試せる
  3. アメリカのアルファスクールのように、今後AIと教育の分野もさらに発展していくと予想される

今はGoogle Labsで限定公開されていますが、将来的にGeminiに組み込まれたら面白いですよね。課題は多いと思いますが、AIと教育の組み合わせがどう発展していくのか、引き続き注目したいと思います。

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