OpenAIのAgentKitとは?AIエージェント開発の現実と課題

矢野 哲平

目次

こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、AIエージェントの今について触れます。

AIエージェントはバズワードになって認知が一気に広がりましたが、その後どうなっているのか、個人的にも気になっていました。「AIエージェントって実際どうなの?」と疑問に感じている人も多いと思います。先日、AIエージェントの95%は失敗しているという話を聞いたこと、そしてOpenAIがAIエージェントの構築ツールを投入してきたことをきっかけに、ここで一度AIエージェントについてじっくり考えてみたいと思います。

この記事では、主に次の3つのポイントを解説します。

  1. そもそもAIエージェントとは何か
  2. OpenAIが発表したAIエージェント構築ツール
  3. 実際にAIエージェントはどうなのか、私自身の経験も交えて

AIエージェントとは?

AIエージェントを簡単に言うと、「AIが自律的に思考して各種ツールにアクセスし、タスクを遂行するAI」です。

たとえば「北海道に旅行に行きたい」とAIに伝えると、航空券のサイトにアクセスして最安の航空券を調べ、札幌のホテルの最安値を探し、周辺の飲食店をまとめてくれる。こんなふうに、AIが人間の代わりにさまざまなタスクを遂行してくれます。

普段のAIとのやりとりはチャット形式が多いと思います。ChatGPTのチャット画面で質問して、AIが回答を返し、人間がさらに質問を重ねて会話のキャッチボールをするイメージです。一方でAIエージェントは、人間の少ない指示でAIが多くのタスクを実行してくれるイメージです。AIエージェントの位置づけはAIコーディングエージェントとは?でも整理しているので、あわせて読むと分かりやすいと思います。

AIエージェントを使う方法

AIエージェントを使うアプローチは、大きく分けて3つあります。

  1. プログラムを書いてAIエージェントを構築する
  2. プログラムを書かずに構築する(ノーコード。海外ではn8n、日本ではDifyが有名)
  3. AIエージェントの機能が事前にセッティングされたツールを使う

実は、私たちも普段、何気なくAIエージェントを使っているケースがあります。たとえばChatGPTやGeminiのDeep Research。AIが指示から調査計画を立て、数十以上のサイトにアクセスして情報を収集し、レポートをまとめてくれる機能です。これも調査系のAIエージェントと言えます。あとはエンジニアがよく使うCursorやVS Codeなどのツールも、コーディング系のAIエージェントを使った開発手法と言えます。

「AIエージェント、聞いたことはあるけれど触ったことがない」と思っている人も、実は触ったことがある、というパターンは結構あります。自分でプログラムを書いて作るアプローチはハードルが高いですが、ノーコードで構築する方法や既存ツールを使う方法なら、意外と簡単に導入できます。

OpenAIのAgentKit

そして最近、OpenAIがAIエージェントを構築するツールを発表しました。ここを詳しく掘り下げます。

先日、OpenAIの開発者向けイベントDevDayが開催され、7つほどの新発表がありました。そのなかにAgentKitがありました。これは簡単に言うと「エージェントビルダー」、つまりAIエージェントの環境を簡単に設計できるツールです。イメージとしては、ZapierやDifyのようにノーコードでAIエージェントを構築できるツールです。コードを書かずに、ブロックをつなげる感覚でAIエージェントの中身を作っていけます。

AgentKitはAPIの登録をしている人であれば使えます。ページにアクセスして、ブロックをつなげる感覚でエージェントを組み立てていきます。AIエージェント向けのツールがいろいろ用意されていて、MCPを連携したり、RAGと連携させたりもできます。

こうしたノーコードツールが出たとき、海外では「n8nキラー」と呼ばれたりもしました。n8nは、同じようにノーコードでAIエージェントやAIの自動化ができるツールです。日本ではDifyがイメージ的に近いです。

ただ、私が触ってみた感想としては、現時点ではMakeやn8nのほうが使いやすいと感じました。理由は2つあります。

1つは、現時点でスケジュール機能がないこと。そのため、AIの自動化はできません。たとえば「毎日指定した時間にAIニュースを検索してレポートをまとめる」といったタスクは、現時点ではAgentKitではできないようです。もう1つは、接続できる外部ツールがMakeやn8nに比べて少ないこと。Todoistと連携するなど手軽に外部ツールとつなぐ点では、Makeやn8n、Difyのほうが使いやすいと感じました。

とはいえ、あくまで現時点の話です。そしてAgentKitは文字通りAIエージェントを構築するツールなので、AIの自動化とは少し違ったアプローチなのかもしれません。OpenAIのAPIが使える方は触ってみると面白いと思います。コードを書いて実装することが多かったAIエージェントを、ノーコードでブロックをつなぐ感覚で構築できる。社内でAIエージェント導入の検討があったとき、ノーコードでさっとプロトタイプを作れる。こうした選択肢は、刺さる人には刺さると思います。

AIエージェントの95%は失敗している?

2024年ごろからAIエージェントが頻繁に登場するようになり、2025年は「AIエージェント元年」と言われたりしました。じわじわ浸透しているイメージはあります。

ただ一方で、AIエージェントは結構どこも失敗しているという話もあります。マサチューセッツ工科大学(MIT)の「ビジネスにおけるAIの現状 2025年」というレポートによると、AIエージェントのプロジェクトに数十億ドルが投資されているにもかかわらず、95%は失敗していると報告されています。成功しているのは5%にとどまる、というわけです。

この成功している5%の企業がどういうアプローチをしているのか、いくつか紹介されています。

  • AIの不確実性を認めている。AIは失敗するもの、万能ではないという前提で構築している
  • 人間参加型の設計をしている。AIを自律的な意思決定者ではなく、人間のアシスタントとして位置づけ、人間が簡単に検証・上書きできる設計を採用している

レポートでは、AIツールの企業導入は進んでいるものの、ビジネスの根本的な変革には至っていないところが多いとも指摘されています。業界別で見ると格差は明白で、テクノロジー企業とメディアの2業界では明確な構造的変化が見られる一方、その他の業種では目に見える変革が起きていないそうです。

実際、ソフトウェア企業のような開発分野ではAIの導入が非常に進んでいます。私自身もClaude Codeのようなコーディング特化のツールを使っていて、目に見えて恩恵を感じています。一方で、ある製造業のCOOは「LinkedInの広告ではAIによってすべてが変わったと言われているが、我々の業務では何も根本的には変わっていない。契約書の処理が少し早くなっただけだ」と語っています。AIを導入したすべての企業や職種が根本的な変革を遂げているわけではない、ということです。

明るいニュースばかりではありませんが、テクノロジー企業やメディア企業のようにAI導入で劇的な構造変化が生まれている事例は見逃せません。AgentKitのようにエージェントを簡単に構築できるツールも出てきていますし、モデル自体の進化も続いています。現状の導入は難しいとは思いますが、引き続き淡々と進めていきたいと感じています。AI企業がどう社内導入を進めているかはAIエージェントの活用事例が参考になります。

AIエージェントとAIワークフローの違い

95%が失敗しているというレポートを見て、正直そこまで驚きはありませんでした。私個人の感覚やインターネット上の意見を見ても、AIエージェントの導入は難しいと感じる点が多かったからです。

どちらかというと、AIエージェントよりもAI自動化のほうがやりやすいと思うことがあります。AIにどのツールを使うか判断させ、裁量権を持たせてタスクを進めさせるのは、聞こえは良いのですが、思うように精度が出なかったりハルシネーションの問題が出たりします。それよりも人間が道筋をしっかり明示し、そのレールに沿ってAIにタスクを遂行してもらうほうが、導入もコントロールもしやすいと感じます。これをAIワークフロー、あるいはAI自動化と呼んだりします。

AIエージェントとAIワークフローは混同されがちです。「AIエージェントと聞いたけれど、実際見たらAIワークフローだった」というケースもあります。整理すると次のようになります。

  • AIエージェント:AIが自律的にタスクを実行し、外部ツールにアクセスして柔軟に対応する。複雑な業務や動的な環境で使われる。AIが仕事の終わりを自ら判断する
  • AIワークフロー:人間があらかじめ指定したレールに沿ってAIがタスクを遂行する。繰り返し作業や定型業務で力を発揮する。人間が仕事の終わりを指定する

AIワークフローのほうが導入のしやすさやメンテナンスの面で扱いやすいので、AIエージェントがなかなかうまくいかない人は、ワークフローのアプローチも面白いと思います。

ワークフロー系のツールには、Zapier、Make、n8n、Difyなどがあります。Difyはリコーが企業導入の事業を始めて、国内でも認知が増えてきました。海外ではn8nが有名です。個人的には、無料で使える範囲が広いMakeがおすすめです。n8nも手元のパソコンで動かせる点が良く、AIワークフローもAIエージェント機能も備えています。AIエージェントという視点ではMakeよりn8nのほうがおすすめです。

なお、私自身もどちらかというとAIエージェントよりAIワークフローを多く構築しています。たとえば海外のニュースサイトからAIの情報だけをピックアップして通知するワークフローや、書いた文章を自動で校正するワークフローなどです。AIエージェントはハードルが高いと感じる場合は、まずAIワークフローから試してみるのがおすすめです。

あわせて進めたいのが、自分の仕事の棚卸しです。繰り返しの業務や定型作業は意外と穴場で、「これAIで対処できるかも」というものが見つかります。業務を細分化してAIワークフローを適用できるものを探し、そこから段階的にワークフロー、AIエージェントへと進んでいくのが良いと思います。

まとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

  1. AIエージェントとは、「AIが自律的に思考して各種ツールにアクセスし、タスクを遂行するAI」
  2. OpenAIからAIエージェントを構築するノーコードツール「AgentKit」が発表された
  3. MITのレポートによると企業のAIエージェント導入は95%が失敗しているとも言われる。うまくいかないケースでは、人間が指定したレールに沿ってAIがタスクを遂行するAIワークフローの導入も検討してほしい

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