こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、最近AI界隈でちょっとしたトレンドになっている「Vibe Coding(バイブコーディング)」と「Vibe Marketing(バイブマーケティング)」という言葉について触れます。
名前から想像できるように、どちらかというとエンジニアやマーケター向けの話です。ですが、AIを使った新しい仕事の進め方という側面もあるので、多くの人に関係する内容だと思います。
この記事で解説するポイントは主に次の3つです。
- そもそもVibe Codingとは何か
- Vibe Marketingとは何か
- これら2つのトレンドについての私見
Vibe Codingとは?
「Vibe Coding」という言葉は、OpenAIの創設メンバーでもあるアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏が、2025年2月にXに投稿したのがきっかけでした。中身を引用します。
私が「バイブコーディング」と呼んでいる新しいタイプのコーディングがあります。それは、バイブスに完全に身を任せ、コードの存在すら忘れてしまうようなコーディングです。AIがあまりにも優秀になりすぎているからこそ、それが可能になったのです。
Vibes(バイブス)は「感覚」といった意味合いです。つまり、感覚に身を任せてAIにコーディングを行ってもらう。人間は最初の指示をするだけで、あとはAIが自動的にコードを生成し、バグの修正まで行ってくれる。人間はただ見守り、最終的な成果物をチェックする。少し夢のような話ですが、こうしたことが現実にできるようになってきています。
Vibe Codingが登場した背景としては、2つの理由が挙げられます。
- シンプルにAIの性能が上がったこと
- AIツールが充実してきたこと
最近、AIの性能はかなり上がってきていると感じます。私はChatGPTの出始めの頃から使っていますが、初期のGPT-3.5の頃は「すごいけれど、周りが言うほど仕事では使えないな」というのが正直な印象でした。それがGPT-4あたりから風向きが変わり、推論モデルが出てきた頃には仕事で活躍する場面が一気に増えました。
AIツールの充実も大きな要因です。カルパシー氏は、コードエディターのCursorや、音声入力のSuperWhisperといったツールを使ってAIと対話しながらコーディングする、と述べています。こうしたツールが揃ってきたことで、Vibe Codingのようなアプローチが取れるようになりました。
プログラミング未経験者にも関係がある
ここまで聞くと、エンジニアだけが恩恵を受ける話に思えるかもしれません。ですが、これまでプログラミングをしたことがない人でも、AIを使えばコードを書けるようになっています。
たとえばExcelを使っている人は多いと思いますが、コードを書けばExcel作業を自動化して業務効率を上げられます。今、手作業でやっている業務も、プログラムを書けば自動化できるケースは多いです。仕事で抱えている課題は、プログラムを使うと意外と簡単に解決できることが少なくありません。
今はChatGPTやClaudeのような高性能なAIがあるので、プログラムを業務に取り入れるアプローチは個人的にとてもおすすめです。AIコーディングそのものに興味がある方はAIコーディングエージェントとは?もあわせて読んでみてください。
Vibe Codingの落とし穴
メリットだけ話すのはフェアではないので、落とし穴にも触れます。
ある海外ユーザーの事例です。その人はVibe CodingでWebアプリケーションを作りましたが、セキュリティに穴があったために攻撃を受け、その顛末をSNSに投稿しました。原因は、APIキーをそのままコードの中に書いていたことでした。
技術的な話なので例えると、クレジットカードを公園に置き忘れるようなものです。拾った誰かが、そのカードで買い物できてしまいますよね。そのユーザーはプログラムを書いた経験がなかったため、このセキュリティリスクに気づけなかったのです。
このように、Vibe Codingは魔法の杖ではありません。それっぽいアプリケーションはできても、中にバグやセキュリティリスクを抱えているケースは普通にあります。だからこそ、最終的には人間のチェックや、人間自身のスキルが必要になります。
先ほどのExcel自動化のようなシンプルな処理であれば、それほど問題はありません。ですが、ユーザー情報を預かるWebアプリケーションや決済機能を持つプロダクトとなると、人間の指示の出し方やプログラミングスキルが求められます。ここは分けて考える必要があります。
私自身の経験も紹介します。先日、Macのデスクトップアプリを作ろうとしてXcodeを触りました。Vibe CodingよろしくAIに任せてみたのですが、いきなり初回で10件ほどエラーが出て、質問してもエラーの無限ループにはまり、断念しました。シンプルに、私にiOSアプリを作るスキルがなかったからです。
ただ、そこでアプローチを変え、Electronというフレームワークを使って同じ機能のデスクトップアプリを作ったところ、今度はうまくいきました。AIを使えば何でもできるわけではありませんが、うまくいかないときはアプローチを変えると突破できる、という良い学びになりました。
今後AIの進化に伴って、Vibe Codingでできることはどんどん増えていくでしょう。ただ、それはAIが人間の仕事を奪うという話ではなく、AIが仕事の質を高めるという話だと思います。そして質を高めるためには、人間自身の学習がやはり続いていきます。
Vibe Marketingとは?
ではVibe Marketingに移ります。名前から想像できるように、Vibe Codingの後に出てきた、それを由来とする言葉です。いわばVibe Codingのマーケティング版です。
Vibe Marketingは、マーケターがブランドの雰囲気やスタイル、ブランドらしさを定義し、AIがそれを具体的な形に落とし込んでいくアプローチです。Vibes、つまり感覚に従ってAIに指示を出し、さまざまなマーケティングタスクを実行させます。最終的にAIがアウトプットした広告クリエイティブや施策を、人間が感覚で取捨選択していきます。
わかりやすい例で考えてみます。これから夏なので、日焼け止めのキャンペーンを題材にしましょう。キャッチコピーや広告画像をAIに指示して大量に作らせ、それを人間が自分の感覚や経験に基づいて選んでいく。AIを使えば1000件のクリエイティブを一気にアウトプットすることも可能です。大量のラフ案やアイデア出しをAIに任せ、人間はブランドイメージに沿って選択していく、というイメージです。
ここに自動化のアプローチを加えるのもVibe Marketingの特徴です。従来は大人数でチームを組んでいたキャンペーン施策を、少人数で最大限の成果を出せるようになります。
Vibe Marketingが出てきた理由も、Vibe Codingと同じです。AIの性能が進化したこと、そして便利なAIツールが出てきたことです。マーケティングの文脈では、自動化ツールのMakeやn8n、Gumloopなどがよく登場します。ノーコードで使える自動化ツールによって、マーケター自身が自動化処理を実装できるようになったのは大きいと思います。
さらに、画像生成AIや動画生成AIの進化も、広告制作の場面でVibe Marketingを後押ししています。市場をリアルタイムでチェックしながら広告クリエイティブや配信戦略を細かく調整し続けたり、競合のキャンペーンをリアルタイムでAIに分析させたりすることも可能です。マーケターの役割は、自ら実行する側から、AI全体を指揮する指揮者のような存在へと変わっていく可能性があります。
なお、Vibe Marketingでは、いきなり自動化してAIに任せるのではなく、まず自分で手作業をやってみてプロセスを理解することが推奨されています。広告クリエイティブを作るにしても、背景・フォント・配置などを自分で試行錯誤して自分のスタイルを確立してから、AIの導入や自動化を考える。この順番が大事だと言われています。
Vibe Founding という発想
Vibe CodingもVibe Marketingも、多少は言葉遊びの部分があります。ですが本質的には、今後AI主導で仕事を進められるようになる一方で、コアとなる部分は人間が担当していく、という仕事の進め方を示す指針のようなものだと私は理解しています。
最後に、もう一つ掘り下げて締めたいと思います。Vibe Founding(バイブファウンディング)です。Founding は「起業する」といった意味合いで、共同創業者を co-founder と呼んだりしますよね。Vibe Founding は、Vibe CodingとVibe Marketingを組み合わせた起業のアプローチです。
概要はこんなイメージです。日常的に感じている課題から、その解決につながるビジネスアイデアを思いつく。まずVibe Marketingで市場規模や競合を調査する。次にVibe Codingでアイデアを具体化してプロダクトを作る。さらにVibe Marketingで、そのプロダクトをユーザーに届ける施策を作る。つまり、ビジネスの検証・市場調査・プログラミング・マーケティングを、AIを使って一気通貫で進めていくわけです。
これも言葉遊びの面はありますが、AIを使った新しい起業のアプローチとして個人的には面白いと感じています。今まで起業したことがない人でも、AIを駆使して週末起業や個人開発ができる。そんな世界はもう目の前かもしれません。
まとめ
最後に、今回のポイントをまとめます。
- Vibe Codingは、アンドレイ・カルパシー氏が提唱した新しいコーディングのアプローチ。感覚に身を任せて、AIにほとんどのコーディングを任せる
- Vibe Marketingは、Vibe Codingから派生した言葉。AIを駆使してマーケティング領域で最大限の成果を上げる。広告クリエイティブや施策の作成、マーケティングタスクの自動化などを行う
- AIの進化に伴って、どちらもできることは増えていく。ただし成果の質はAIを指揮する人間のスキルに大きく左右される。だからこそ、これからも学び続ける必要がある