こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、AIエージェントと電話業務を組み合わせる、つまりAIエージェントでコールセンターを構築するという話に触れます。

私たちはいま、バックオフィスの業務やプログラミングなど、さまざまなタスクでAIを活用しています。実は電話業務でもAIエージェントを使えるようになってきています。この記事では、次の3つのポイントを解説します。

  1. AIエージェントとコールセンターを組み合わせる可能性
  2. それを実現するVapiとTwilioというツール
  3. AIエージェントを電話業務で使う具体的な事例

読み終える頃には、「電話業務をAIに任せる」という選択肢が一つ増えていればと思います。AIエージェントそのものについては、先にAIエージェントの活用事例を読んでもらうと位置付けが分かりやすいかもしれません。

AIにコールセンター業務を任せる

先日、実際にAIエージェントによる電話応対のデモを試してみました。スマートフォンから固定電話宛に電話をかけると、電話先ではAIエージェントが受電してやり取りしてくれる、という構成です。

簡単なデモでしたが、構築にかかった時間はだいたい30分ほど。AIの技術が進化したことで、コールセンター業務をAIに行わせるという選択肢を、私たちが現実的に取れるようになっています。

では、こうしたAIエージェントによる電話業務はどう構築するのか。キーワードは2つ、VapiとTwilioです。ざっくり言うと、VapiでAIエージェントの頭脳を作り、Twilioで電話番号を用意して繋げる。この組み合わせです。一つずつ見ていきます。

Vapi:AIエージェントの頭脳を作る

Vapi(ヴァピと読みます)は海外のプロダクトで、簡単に言うとコールセンター向けのAIエージェントのワークフローを構築できるツールです。

AIを使った自動化をノーコードで構築できるツールに、Makeやn8n、Difyなどがあります。あのコールセンター業務版、とイメージすると分かりやすいかもしれません。つまり、ノーコードでコールセンター業務を行うAIエージェントを構築できるツールです。

「この番号に電話がかかってきたら、このAIボイスで、このAIモデルを使って、このように対応する」。こうした一連のワークフローをノーコードで設定できます。先ほどのデモでは、AI VoiceにOpenAIのものを使い、AIエージェントの頭脳部分のモデルにも同じくGPTを使いました。

「Aの条件のときにはBの処理を実行する」といった、受電内容にあわせた分岐も設定できます。Vapi単体でワークフローを組むこともできますし、より細かい制御をしたい場合はn8nやMakeと連携してカスタマイズすることも可能です。

Twilio:固定電話と繋げる

VapiでAIエージェントに電話を出てもらうといっても、固定電話とどう絡めるのか疑問に思う人も多いと思います。これはTwilioというサービスで解決できます。

Twilioを簡単に言うと、固定電話の番号を取得できるサービスです。先ほどのデモで使った固定電話の番号もTwilioで取得したものです。厳密には、電話番号の取得だけでなく、ショートメッセージやビデオ通話、メールといった通信機能をアプリに簡単に組み込めるサービスです。

ちなみにTwilioは海外発のプロダクトですが、国内では以前はKDDI、現在はソフトバンクが代理店として日本展開をサポートしています。

補足すると、Vapiでも固定電話の番号は取得できます。ただ今回は、AIエージェントの構築はVapiで行い、使用する固定電話の番号はTwilioで取得する、という構成にしました。海外の番号は比較的簡単に取得できますが、日本の固定番号を取得するのは少しハードルが高いです。Twilioを使えば電話番号を取得し、それをVapiに渡してAIエージェントの電話窓口の番号として使えます。

AIコールセンターはどんな場面で使えるか

AIコールセンターを構築できると、どんなシーンで使えるのか掘り下げてみます。

予約電話の受け付け

まずはデモで試したような予約電話の受け付け。飲食店やクリニックの予約など、いろいろな場面で使えます。特に飲食店は、ランチタイムのような忙しい時間に電話がかかってきても応対の時間を確保するのが難しいことがあります。インターネット予約という選択肢もありますが、電話で予約する人もまだまだ多い。人間の手が離せないときにAIエージェントが応対する、というわけです。

ここでこう思う人もいるかもしれません。「AIエージェントが予約のミスをしたらどうするのか」と。これは至極真っ当な懸念で、普段からAIを使っているユーザーなら予約ミスは容易に想像できます。この点は実装時の課題として考える必要があります。たとえば予約完了後にショートメッセージを送ってユーザーにチェックを促す、当日に地図のURLを添付してリマインドを送るなど、実装面で回避する設計が求められます。

このAI電話受付システムの何が嬉しいかというと、システム連携が容易な点です。予約電話を受け取った後、AIエージェントが自動で予約管理のカレンダーに書き込む、といったこともできます。予約キャンセルの対応も同様です。

半分AI・半分人間の受電

ここまではAIエージェントがすべて応対する完全自動のケースでした。ただ、人間の介在が必要なケースも当然あります。半分はAIエージェントが担当し、もう半分は人間が対応する、というシーンです。

たとえば年金事務所への問い合わせを想像してみてください。「住所を移転したのに郵便物がまだ前の住所に届くので調べてほしい」という内容だとします。従来の流れだと、電話をかけるとまずプッシュフォンのアナウンスが流れます。「年金加入者ダイヤルは1を、個人年金のご相談は2を……」といった具合です。自分の用件に合う番号を待って押し、しばらく待ってオペレーターが出て、ようやく内容を話す。こうした流れは、行政でも民間のコールセンターでもよくありますよね。

これがAIエージェントだとこう変わります。電話をするとAIエージェントが即座に出て、「ご用件は何ですか」と尋ねます。人間が用件を話すと、AIが適切な部署に割り振り、どういう用件で電話をかけてきたのかを人間のオペレーターに渡します。つまりプッシュフォンと違い、担当部署の割り振りに加えて用件の抽出までをAIが行ってくれます。事前にヒアリングが必要な内容なら、AIが質問して内容を取りまとめておくことで時間の節約にもつながります。

先の年金の例なら、会社の住所を調べて住所が更新されているか確認する部分は人間が対応すべきでしょう。このように、AIが担当する部分と人間が担当する部分をうまく構成すれば、電話応対業務も効率化できます。

発信業務

ここまでは受電業務の話でしたが、逆のパターンも可能です。AIが固定電話から顧客の電話番号へ発信する、というものです。すでにこうした取り組みの事例もあります。

たとえば、インターネット経由で予約をいただいたお客様へ予約確認の電話を行う。こうしたタスクもAIに委任できます。

一方で、これはあまり推奨できない使い方ですが、顧客リストから営業のアポ電話をAIにかけさせることも、可能といえば可能です。アメリカの事例で、1万件の顧客リストをAIエージェントに渡して営業電話を代行させる、というものがありました。個人的には「うーん」という感想ですが、ともあれAIには受電だけでなく発信業務も任せられる、ということです。

まとめ

VapiやTwilioを使えば、AIエージェントによるコールセンターを構築できます。

  1. AIエージェントを使ったコールセンター業務には大きな可能性がある
  2. 完全にAIに応対させる、半分をAIが対応して残りを人間が巻き取る、発信業務に使うなど、さまざまなアプローチがある
  3. AIコールセンターはVapiで構築でき、固定電話の取得にはTwilioが使いやすい

おそらく多くの職種で電話業務は切り離せないタスクです。自社の電話業務の一部をAIエージェントに切り替える、という選択肢を検討してみるのも面白いかもしれません。電話に限らず、業務へAIをどう浸透させるかについてはAIエージェントの活用事例も参考にしてみてください。