こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、AIエージェント時代の新潮流であるB2Aについて触れます。
AIの発展でさまざまなことが変わりましたが、なかでも大きいのが働き方です。日々の仕事にAIがじわじわと組み込まれてきています。今日話すB2Aは、それとはまた違った話です。
これまでビジネスは対人間を想定して設計されてきました。しかしこれからは、対人間ではなく対AIエージェントを想定したものも出てきています。つまり、人間を顧客としたビジネスモデルだけでなく、AIエージェントを顧客としたビジネスモデルを考える必要が出てきた、という話です。この記事では次の3点を解説します。
- そもそもB2Aとは何か
- B2Aの具体例
- このトレンドで何がどう変わっていくのか
B2Aとは何か
B2Aはビジネス to エージェント(Business to Agent)の略です。対人間ではなく、対AIエージェントを想定したビジネスモデルを指します。
整理のために、B2BやB2Cと並べてみます。B2Bはビジネス to ビジネスで、企業が企業を対象に商品やサービスを提供するモデルです。たとえばOpenAIが展開するエンタープライズ版のような企業向けサービスや、freeeが提供する人事・労務サービスがこれにあたります。
B2Cはビジネス to コンシューマーの略で、企業が個人を対象にするモデルです。OpenAIの個人向けChatGPTがこれにあたります。ちなみにメルカリのような個人間取引はC2Cに分類されます。
世の中のビジネスの多くは、このBとCの組み合わせで説明できます。そこに、BでもCでもないAという新しい概念を持ち込むのがB2Aです。つまり、企業が人間ではなくAIエージェントを対象に商品やサービスを提供するビジネスモデルです。
なぜいまB2Aなのか
なぜこの話をしようと思ったかというと、先日XでこのB2Aに関する投稿が話題になっていたからです。ちょうど私もエージェント向けのプロダクトを作っていたこともあり、改めてこの概念を取り上げようと思いました。
投稿の一部を抜粋すると、こうあります。
2Cでも2BでもないAIエージェントそのものがお客さんになる2Aという市場が動き始めています。2026年はAIエージェントの普及が一段と進む年と言ってよさそうです。Claude Cowork/Dispatch、Manus、OpenClaw。年明けからAIエージェントに関するリリースが途切れることなく続いています。私も開発やリサーチ業務でエージェントを日常的に動かしていますが、年初と今とではもう景色が違います。何が変わったか。エージェントを作るツールに加え、エージェントが実際に使う周辺サービスが急増し始めました。
この投稿では2A向けのサービスが200件ほど分類されていました。それだけエージェントを対象にしたサービスが増えてきている、ということです。
たとえばメールのサービス。従来は人間がメールを受け取って中身を確認する、という人間向けのものでした。これをAIエージェント向けにアップデートしたプロダクトが、海外で9億円ほどを調達したりしています。人間がメールを管理するのではなく、AIエージェントが人間の代わりにメールを管理する。そう最適化されたプロダクトです。
エージェントコマースという実例
より身近な例で言うと、エージェントコマースも最近よく聞くようになりました。これは、AIエージェントが人間の代わりに商品検索や購入決済を自律的に行うオンラインショッピングです。
実はChatGPTもこのエージェントコマースに取り組んでいて、昨年10月ごろから実装に着手しています。OpenAIのプレスリリースを引用すると、こう説明されています。
ChatGPTでは、人、AIエージェント、企業が連携して製品購入を行える新しい仕組みを導入し、エージェントコマースの第一歩を踏み出しました。
さらにマスターカードやVisaといったクレジットカード会社も、AIエージェントが自律的に決済できる仕組みを開発しています。簡単に言うと、AIエージェントにクレジットカードを持たせて決済させる、というものです。ユーザーが予算や条件を設定するだけで、AIが自動で買い物を実行します。AI対応カード(AIレディカード)として、AIエージェントに安全にクレジットカードを持たせる取り組みが進んでいます。
エージェントコマースが実現すると何ができるか、例を挙げてみます。たとえば私が来月キャンプに行くとして(実際に行くのですが)、AIエージェントに「来月◯◯のキャンプ場に行きます。必要なものがあれば揃えておいてください」と指示するとします。
すると、AIエージェントはまずどこのキャンプ場に行くかを調べ、そのキャンプ場のホームページから販売品を調査します。「このキャンプ場には薪が販売されていないので事前に購入しておきましょう。着火剤もないようなので、ついでに購入しておきましょう」。さらに私の過去の購買履歴を見て、「テントや椅子、バーベキューコンロは持っているので購入は不要そうです。ただバーベキューの網は購入したのがかなり前なので、買い替えを矢野さんに確認しましょう」といった具合に進めてくれます。
このように、個人の購買履歴や背景情報(コンテキスト)を取り込んで最適な買い物タスクを行う。エージェントコマースが実現すると、こうしたことができるようになります。
YコンビネーターもB2Aに言及
対人間ではなく対エージェントを想定したサービスや商品は、今後増えていくと思います。海外の人気ベンチャーキャピタルであるYコンビネーターも、過去にSNSでこう投稿しています。
B2BでもB2Cでもなく、B2A(企業対エージェント)です。AIエージェントをターゲット顧客とする製品を開発しているスタートアップを探しています。エージェントが求めるものを作りましょう。
AIの登場で私たちの環境は大きく変わりました。業務にAIを使う人は増え、プログラミングのように以前はできなかったこともできるようになっています。こうした「AIを業務で活用する」流れとは別に、「AIを顧客として捉える」ビジネスを展開する流れも出てきている。後者は見逃せないトレンドだと思います。AIをどう業務に取り入れるかについてはAIエージェントの活用事例も参考になります。
GoogleのA2Aにも触れておく
良い機会なのでA2Aについても触れておきます。エージェント to エージェント(Agent to Agent)の略で、エージェント同士がやり取りするための仕組みです。Googleが2025年に発表したもので、AIエージェント同士がスムーズに連携するための共通言語のようなものです。
たとえば海外旅行を計画するとき、航空券、ホテル、現地のレストランと、いろいろな会社が絡みます。各社がAIエージェントで窓口を担っていれば、「この日程のフライトは空いているか」「この日程のホテルに空室はあるか」「現地のレストランを予約できるか」といったやり取りを、異なるエージェント間でスムーズに進められます。こうしたエージェント同士の連携の仕組みを、GoogleがA2Aとして公開しています。
課題と、私たちにできること
もちろん、エージェント周りを実装していくと課題はたくさんあります。一番はやはり安全性です。エージェントが暴走しないか、情報が漏れないか。クリアすべき課題は山積みです。
ただ、近年のAIエージェントの進化を見ると、エージェントだけで完結する商取引や、エージェントを対象にしたビジネスモデルは、夢物語ではなく現実味を帯びてきています。海外の調査会社の予測では、2026〜2027年に「エージェントが主要な顧客」となるサービスが標準化するだろう、とも言われています。こうした話はポジショントークになりがちなので話半分に聞く必要はありますが、B2Aというトレンドが出てきていることは頭の片隅に置いておく価値があります。
私も先月からエージェント向けのプロダクトを作っていますが、サンプルがあまりないので手探りで試行錯誤しています。たとえばエージェントコマースを考えると、前提がガラッと変わります。従来のECサイトは、訪問した人間が買い物しやすいようさまざまな機能を付け、YouTubeやInstagram、Google検索で広告を出稿して訪問者を増やしていました。
しかし対エージェントになると、AIエージェントは人間のように広告をクリックしませんし、感情で動くこともありません。これまでは画面の向こうの人間を想像しながらビジネス戦略を考えていましたが、今度は画面の向こうのAIエージェントを想定してビジネスを展開する必要が出てくる可能性が高い。エージェント開発の現実についてはOpenAIのAgentKitの記事でも触れています。
AIの活用方法は、みんな手探りです。それに加えて、AIをお客さんとしてどう接していくかという視点も必要になる時代が来るかもしれない。いや、実はもうそこまで来ているのかもしれません。
まとめ
- B2Aはビジネス to エージェントの略で、企業が人間ではなくAIエージェントを対象とするビジネスモデル
- OpenAIも実装を進めるエージェントコマースのように、人間ではなくAIエージェントが買い物を代行する未来が近づいている
- AIエージェントは人間と違い感情で行動せず広告もクリックしない。B2Aの進め方は始まったばかりで、多くの企業が手探りの状態
現時点で私たちにできるのは、B2Aという潮流が来ているという認識をアップデートすることではないでしょうか。