自分の仕事道具はAIで自作する — エディターもアプリも作れる時代へ

矢野 哲平

こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では「自分の仕事道具をAIで自作する」というアプローチについて、私自身が実際に作ったものを交えて紹介します。

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自分の仕事道具をAIで自作するとは

言葉のとおりで、仕事で使うツールを自分で作ってしまうというアプローチです。

ここで言う「ツール」の範囲はかなり広く、Chromeの拡張機能から、普段使うiPhoneアプリ、パソコンで動くデスクトップアプリまで含まれます。

なぜこんなことができるのかというと、AIはプログラミングが非常に得意だからです。人間が「こういうものを作りたい」と指示するだけで、ある程度のものであればAIが作ってくれます。

以前からAIを使ったプログラミングの始め方でも触れてきたテーマですが、そのときにおすすめしていたのはChromeの拡張機能でした。比較的簡単に作れるからです。

以前より「作れるもの」のレベルが上がっている

そこから時間が経ち、状況はかなり変わりました。

端的に言って、AIの進化が凄まじいのです。以前は「作るのがちょっと難しいな」と思っていたものでも、結構できるようになっています。

つまり、Chrome拡張以上のものが望めるようになった。より複雑なものを、以前に比べて作れるようになったということです。理由はシンプルで、AIモデル自体の性能がどんどん上がってきているからです。

実際に自作したもの

コードエディター

まず作ったのはコードエディターです。Cursorのような、プログラミングをするときに使うツールですね。

もともとVS Codeをはじめとする既存のエディターを使っていたのですが、自分が使わない機能が結構多いと感じていました。多機能である点は、自分にはあまり必要ではなかったのです。

それよりも、素早く起動できて、なおかつClaude Codeを使うことに特化したエディターが欲しいと思っていました。

そこで、欲しい機能を自分の中で整理してAIに伝え、コードエディターを自作しました。具体的な機能としては、AIエージェントを並列で動かしているときに、どのエージェントが動いているのかを視覚的に分かりやすくしています。

今ではエディターはこの自作したものだけを使っています。当然の結果だと思っていて、自分が欲しいと思う機能だけを搭載しているので、自分にとってはすごく使いやすいのです。

ノイズ除去アプリ

次に、音声から特定のノイズを除去するアプリも作りました。

音声のノイズ除去アプリは世の中にいろいろありますが、多くは一般向けに作られています。つまり、様々な人の音声を学習させたうえでノイズを除去する仕組みです。もちろんある程度は除去できます。

ただ、私の声だけで学習させているわけではないので、どうしてもノイズの除去漏れが出てきます。

そこで自分の声だけで学習させてノイズを除去するアプリを作ってみたところ、これが結構うまく機能しました。今ではこのアプリを常用しています。

文字起こしアプリ

それ以外に、文字起こし系のアプリも作りました。音声をテキストに変換する処理はまさにAIが活躍する場面ですが、そうしたものも自分で実装できます。

こんな具合で、以前はChrome拡張をおすすめしていたところから、スマホアプリやデスクトップアプリ、さらにエディターまで自作できるようになっています。

既存ツールの「あと一歩」を自分で埋める

便利なツールにも、使い込むほど物足りなさは出てきます。

例えばGemini Notebookは非常に便利なツールですが、使い込んでいくと「ここがもう少しどうにかならないかな」と感じる場面があります。

  • APIが自由に使えないので、自動化のワークフローに組み込みにくい(APIはエンタープライズ版が前提)
  • AIエージェントのような自律的な動きは、あまりしてくれない

こうした既存ツールでは物足りない部分を自分で実装するのは、もう夢物語ではありません。これが今回いちばん伝えたかったことです。

自分用に限定すると開発のハードルは下がる

もしこれが、不特定多数の人が使うことを想定したアプリだとします。

そうなると、運用方法やマーケティング、ランニングコストなど、いろいろ考える必要が出てきます。

一方で、自分だけ、あるいは自分の会社のチームだけといった用途に限定すれば、開発のハードルはかなり下がります。

考えること 不特定多数に配る 自分・自社チームだけ
運用方法 必要 ほぼ不要
マーケティング 必要 不要
ランニングコスト 常に意識 最小限
開発のハードル 高い かなり下がる

自分がまさに欲しいと思う機能だけを搭載したアプリを作れるので、市販で流通しているアプリよりも、より自分の課題に寄り添ったものが作りやすくなります。そして、こうしたアプローチが取りやすくなっているのが2026年現在です。

実装に使うおすすめツール

では具体的にどう作っていくのか。おすすめのツールは3つあります。

ツール 提供元 特徴
Claude Code Anthropic プログラミングに特化したAIエージェント
Codex OpenAI Claude Codeに似た位置づけのツール
Cursor もともと別会社が開発。最近スペースXが買収して話題に

ちなみにCursorは600億ドル、日本円にして約9.6兆円で買収されました。かなりすごい買収額です。もともとはメールをAIで処理するプロダクトだったところからコードエディターにピボットし、多くのユーザーに使われた末での買収でした。

Claude CodeもCodexも、本体のChatGPTやClaudeの有料プランに加入していると、より多くの制限枠を使えるようになっています。ChatGPTの有料プランに入っている方はCodex、Claudeの有料プランに入っている方はClaude Codeを試してみるのがおすすめです。それぞれの違いはAIコーディングエージェントとは?でも比較しています。

実装の流れは至ってシンプル

戦略はとてもシンプルです。

  1. AIと相談する
  2. その内容を仕様書に落とし込む
  3. その仕様書をもとにAIエージェントに実装してもらう
  4. 人間は問題なく動作するかをチェックする

AIエージェントに「この仕様書を参考に実装してください」と指示しておけば、あとは勝手に実装を進めてくれます。食事の前に指示を出しておいて、食事の後にパソコンの画面を見ると実装が完了している。そのような作業の進め方ができます。

この進め方は仕様駆動開発(SDD)の考え方とも重なる部分があります。

仕様書づくりの2つのポイント

ポイント1:AIに振り返りをしてもらう

一度AIに仕様書を作らせておいて、次のように質問します。

今あなたに作ってもらった仕様書、もう一度確認してください。
実装に関して漏れはないですか?

この手順を挟むと、かなり高い確率で「すみません、ここが漏れていました」とAIが言ってきます。そこで「その漏れを埋める形で仕様書を再作成してください」と伝えると、より精度の高いものが出来上がります。

ここでのポイントは、指示の中に「もし漏れがなければ、それはそれでOKです」と一言添えることです。

というのも、仮に漏れがなかった場合でも、AIが漏れを探すために誤作動してしまうケースがあるからです。

これは他のタスクでも言えることで、例えばAIに書類の誤字脱字チェックを頼むとします。このときも「もし誤りがなければ、なかったと報告してください」と逃げ道を作っておかないと、AIが誤字脱字を探すこと自体を目的にしてしまい、重箱の隅をつつくような挙動をすることがあります。

漏れの検知を頼むときは、逃げ道もセットで用意しておく。これはプロンプト全般に効くコツなので、プロンプトの書き方と回答精度を上げるテクニックと合わせて意識しておくと役立ちます。

ポイント2:最終チェックは最上位モデルで

もう一つのポイントは、最終的な仕様書のチェックを行うときは最上位モデルを使うことです。

例えばClaude Codeなら最上位モデルはFableになります。こうした最上位モデルはChatGPT側にも存在します。全体的な最終チェックだけは、いちばん強いモデルに任せるわけです。

人によっては、別の会社のモデルでチェックを行うアプローチを採用しています。

作った側 最終チェックを頼む相手 ねらい
Claude Code ChatGPTの最上位モデル 別の視点で漏れを洗い出す
ChatGPT Claudeの最上位モデル 同じ癖に引きずられない

そして最後に人間による仕様書のチェックを挟むと、より良い成果物を作ることができます。

AIを使えば何でも作れるのか?

ここまで読むと万能に思えるかもしれませんが、そういうわけではありません。経験談を交えて補足しておきます。

少し前に、タスク管理アプリの自作に挑戦してみました。

iPhoneアプリに関しては問題なく作れました。しかも自分が使いたい機能だけを搭載したので、我ながら使いやすいアプリができたと思っていました。

そこから、手元のiPhoneで更新したタスクをMacでも確認したかったので、同期の機能を追加しようとしました。

この同期機能が、実装してみるとかなりの沼だったのです。

タスクやメモを同期させるアプローチはいろいろあり、あれこれ実験して作ってみたのですが、結果的には10回に1回ほど同期がうまくいかないものが出来上がりました。

巷のタスク管理アプリはほぼ100%同期が成功します。それと比べると、10回に1回失敗するのはかなり使いにくいと感じるようになりました。

そこで改めて、TodoistやGoogleタスクといった既存のタスク管理アプリのすごさを実感しました。タスク管理については、今はTodoistを使っています。

このように、AIを使えばいろいろなものが作れるようになりますが、どんなものでも作れるとは限りません。

ただ一つだけ言えるのは、以前に比べて作れるもののレベルはどんどん上がっているということです。複数のデバイスで完璧に同期するタスク管理アプリも、今回は断念しましたが、この先なら自作できるようになるかもしれません。

会社で使うツールを自作するとなるといろいろ制約はあると思いますが、自分の仕事道具をAIで自作するのは業務効率に直結しますし、何より結構面白い作業です。

ポッドキャストのデータ活用も自作でまかなえる

ここで一つ、よくいただく相談を紹介します。

「ポッドキャストの音声を、文字起こし・記事化・ショート動画の台本づくりなど、マルチに活用したい。ナレッジベースとしてGemini Notebookを使うか、Notionに貯めるか迷っている」という内容です。

ポッドキャストをいろいろな形に変換するツールは、実は海外に結構あります。音声からショート動画を作成したり、文字起こしからSNSの投稿を作成したりといったものです。

私も以前いくつか試したことがあるのですが、しっくりくるものには出会えませんでした。海外のツールなので、日本語向けに最適化されていないケースが多かったのです。プロダクトが悪いわけではなく、たまたま日本語に最適化されていなかっただけですが。

そういった話を踏まえておすすめしたいのが、やはりClaude Code・Codex・Cursorです。

  • 文字起こし:Claude Codeを使えば簡単に実装できる
  • 文字起こしからの記事作成:これもClaude Codeで実装できる
  • 記事化するときの裏取り(ファクトチェック):AIエージェントを重ね掛けすれば実装できる
  • 音声からショート動画を作る:AIにHTMLを書かせる方法で実現できる(これは私も実践済みです)
  • ナレッジベースの構築:埋め込み(エンベディング)を使って、ローカルで動作するRAGを構築する

やりたいことは、ほとんどClaude CodeやCodexを使えば全て自作できてしまいます。まずはAIと壁打ちをして作ってみるのも面白いと思います。

まとめ

  1. 自分の仕事道具をAIで自作するアプローチは、以前に比べて格段にレベルが上がっています。より複雑なものが作れるようになりました。
  2. ツールはClaude Code・Codex・Cursorのいずれかがおすすめです。AIと会話をするように、エンジニアでない人でもアプリを作ることができます。
  3. ただし、AIを使えば何でもできるというわけではありません。できることが多くなった反面、人間自身の経験や学習、スキルもやはり大切だと改めて感じています。

自分だけ、あるいは自分のチームだけが使うツールなら、開発のハードルはぐっと下がります。既存のツールに物足りなさを感じている方は、ぜひ一度AIと壁打ちしながら作ってみてください。


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