こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、企業がどのように Gemini Notebook(旧NotebookLM)を活用しているのか、国内外の導入事例を紹介します。
Gemini Notebookに限らず、AIの活用はみんな手探りな部分があります。これは日本に限らず、海外でも同じで、各社が手探りでAIの活用方法を模索しています。そんな中で一番手っ取り早いのが、すでに導入している企業の事例をインプットして、自社の活用のヒントにつなげることだと思います。
この記事で解説するポイントは、主に次の3つです。
- 国内企業のGemini Notebookの活用事例
- 海外企業のGemini Notebookの活用事例
- 国内外の事例から見えてきた共通のユースケース
なお、Gemini Notebookの基礎はGemini Notebookとは?で、個人向けの使い方は活用アイデア6選でまとめています。あわせて参考にしてください。
国内の事例
まずは国内の事例から見ていきます。
京都市:全職員7,000人に導入した自治体の事例
最初は京都市の事例です。自治体の導入事例ですね。
もともと京都市では、DXの推進を掲げる一方で、職員が使えるITツールが不足していたという課題がありました。そこでGemini Notebookに目をつけて、最終的には全職員約7,000人にGemini Notebookのエンタープライズを導入しています。ポイントになったのは、出典に基づいて正確に答えてくれるAIであること。これが決め手になったそうです。
2026年に約30部署・2,000人の導入からスタートして、その後わずか2ヶ月で全職員7,000名に拡大したという経緯があります。
使い方としては、経理事務の膨大なマニュアルを読み込ませて、経理事務に関する質問に何でも答えてくれる専用チャットボットを構築しているようです。外部向けというよりは、内部向けの活用事例と言えます。ほかにも、資料の情報検索や情報抽出、要約、議事録の作成にも使っているとのことです。
この事例から拾えるポイントは、導入のハードルの低さだと思います。導入を決めてから全職員に浸透するまで約2〜3ヶ月というスピード感は、AIツールとしてはかなり早い部類です。AIツールは便利な反面、なかなか導入しづらいという側面もありますが、Gemini Notebookは実際に使っていくとすぐ習得できる。この使いやすさが強みです。
ちなみに、行政機関のAI導入については日本と英国の政府機関はどうAIを導入したのかでも取り上げています。
アコム:コールセンターの属人化ノウハウを解消
次はアコムの事例です。三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の、大手消費者金融の会社です。
アコムがやっているのは、京都市とは逆に外部向けの活用です。具体的には、コールセンター業務でGemini Notebookを活用しています。
コールセンターには膨大な過去の報告書やナレッジが蓄積されているのに、ノウハウが属人化しているという課題がありました。この課題を解決するために、過去の報告書やナレッジをGemini Notebookに読み込ませて、部署を超えて自然言語で情報を照会できる状態を作ったそうです。
これによってコールセンター業務での情報照会がスムーズになり、業務効率化を図ることができたということです。Gemini Notebookに情報を渡すことで、社内の情報に自然言語でアクセスできるようになる。これもGemini Notebookの強みと言えます。
マザーハウス:合言葉は「まずGemini Notebookに聞いてね」
次はマザーハウスの事例です。こちらはアパレルの会社です。
マザーハウスは面白い取り組みを行っていて、「まずGemini Notebookに聞いてね」という合言葉を設定したそうです。
もともとの課題は、IT部門と経理部門が社内からの頻繁な問い合わせ対応に追われていたこと。しかも、その問い合わせ内容は過去に何度も答えていた内容だったそうです。これはマザーハウスに限らず、多くの会社でよくあることですよね。
そこで、過去の問い合わせ内容やIT部門・経理部門のマニュアルを全部Gemini Notebookに読み込ませて、専用の問い合わせ対応チャット環境を準備しました。社内ルールとして、わからないことがあったらまずGemini Notebookに聞く。それでも解決できないことは人間が巻き取る。こうした仕組みを構築したそうです。
これによって、簡単な質問は社員がAIで自己解決できるようになりました。さらに、人間に届く問い合わせも「Gemini Notebookに聞いたけど、ここがわかりませんでした」という具体的な内容に変わり、対応しやすくなったという効果もあります。
社員数が多く、社内の問い合わせ対応で各部門の業務が忙しい会社であれば、この「社内問い合わせをGemini Notebookで巻き取る」使い方が一番導入しやすいかもしれません。
海外の事例
ここまで国内の事例を紹介してきました。次は海外に目を向けてみましょう。
デロイト:数週間の調査業務を大幅短縮
最初に紹介するのはデロイトです。世界最大級の会計コンサルティングファームです。
デロイトは、主に調査業務にGemini Notebookを活用しています。Gemini Notebook上でディープリサーチを展開して、数週間かかっていた調査業務を大幅に短縮することに成功したそうです。ポイントは、社内のデータも社外のデータもGemini Notebookで処理していることです。
実は、Gemini Notebook上ではディープリサーチも使えます。たとえば、ある業界について情報を集めたいとき、Gemini Notebook上でディープリサーチを起動してインターネット上からたくさん情報を集める。そして集めた情報を、またGemini Notebookで整理する。こういった使い方ができます(各社のディープリサーチ機能はAI各社のディープリサーチ比較で解説しています)。
中には、音声要約(いわゆるAIポッドキャスト)を活用するコンサルタントもいるとのことです。Gemini Notebook上で整理した調査資料を、移動中に耳でキャッチアップできるように音声要約の機能を使う。これによってクライアントへの提案速度も上がったということです。営業先の情報、競合の情報、市場の動向をディープリサーチでまとめて、移動時間に耳でインプットする。こうした使い方もスマートだと思います。
QuestTrade:音声要約を戦略のメインに
デロイトでは一部のコンサルタントが音声要約を使っているという話でしたが、音声要約を戦略のメインに据えている会社もあります。カナダのオンライン証券、QuestTrade Financial Groupです。
こちらでは、長文レポートを音声版にして、社員が耳で情報を摂取できる環境を設計し直しました。もともとの課題は、社内に蓄積されている膨大なレポートを、忙しい従業員が読み切れない、時間の確保もできないことでした。
そこでGoogleドライブ上のファイルをGemini Notebookで音声要約に変換し、社員が耳で情報を取得できる形式で配布したそうです。
AIポッドキャストというと、プライベートで使うイメージがあるかもしれません。しかし、会社として戦略的に業務の中に組み込むというアプローチも面白いと思いました。音声要約の作り方はGemini Notebookで自分専用ポッドキャストを作るで詳しく解説しています。
Rivian:異なる部門の「接着剤」として使う
次はRivianの事例です。アメリカのEVメーカーです。
Rivianでは、部門をまたいだGemini Notebookの導入事例が紹介されています。もともとの課題は、テック部門と非テック部門の間で同じ質問が繰り返され、認識合わせのために長い会議が必要だったことです。
たとえば、クリエイティブチームが新しくキャンペーンを展開するときに、テック部門への問い合わせが増えてしまう。テック部門の書類は専門的な技術用語が並んでいてわかりにくいので、認識をすり合わせるために直接テック部門の人に質問していたわけです。それぞれバックボーンが違うので、仕方のない面もあります。
そこでRivianは、Gemini Notebookを異なる部門の「接着剤」のような役割で使いました。専門用語が使われているテック部門の書類を、クリエイティブチームがわかりやすいドキュメントに翻訳する。このような使い方をしたそうです。
Gemini Notebookはボタン一つで要約できますが、実はプロンプトをかなり細かく設定できます。そして、資料を別の形式に変換するのはAIが得意とするところです。テック部門の専門的で難しい書類を、役員向けやマーケティング向けにわかりやすいドキュメントに変換する。こうした使い方もおすすめです(プロンプト設定などのコツはGemini Notebookを使いこなす6つのコツにまとめています)。
事例から見えてきた5つの共通ユースケース
以上、国内外のGemini Notebookの活用事例を紹介しました。まだまだ事例はたくさんあるのですが、いろいろ調査していくと、Gemini Notebookの活用方法はだいたい5つに集約されると感じました。
- 社内問い合わせの一次対応:社内のマニュアルやQAを読ませて、人間の担当者が対応する前にGemini Notebookに質問する環境を整える
- 属人化しているナレッジの復元:議事録、過去の報告書、ベテランの経験など、社内にあるけど可視化されていない情報をGemini Notebookに渡して、自然言語で検索できる状態にする。社内に蓄積した「見えない資産」を「使える資産」に復元するアプローチ
- リサーチ業務:調査から提案までの工程を圧縮する。大量の書類処理が得意で、ディープリサーチも使えるので調査業務に活躍する
- 専門文書の読解支援:仕様書、法律の資料、医療の文献など、読むのに時間がかかる難解な文章を効率的に理解する
- 書類の音声化:長文レポートを音声要約にして、移動時間に情報を取得できる環境を整える。これは少し意外でしたが、特に海外の事例でよく見かけました
注意点:データの過剰投入は精度を下げる
反対に、あまり良くない導入パターンについても触れておきます。よくあるのが、データの過剰投入や未整理データの混在による回答精度の低下です。
Gemini Notebookはいろいろな書類やデータを投げ込めるので、ついついファイルを渡しがちになります。しかし、参照するファイルがあまりに増えると、今度は反対にAIが文脈の判断を誤る可能性が出てきます。
そうならないために、どういったデータを投入するのか、関係のないデータは投入しないようにする、といったデータ投入時の判断・仕組みも別で考えておく必要があります。こうした点に注意しながら使えば、社内の業務効率化に大幅に貢献してくれるツールだと思います。
まとめ
最後に、今回のポイントをまとめます。
- 国内では京都市(全職員7,000人)、アコム(コールセンター)、マザーハウス(社内問い合わせ)など、導入から浸透までが速い事例が目立つ
- 海外ではデロイト(調査業務)、QuestTrade(音声要約の戦略活用)、Rivian(部門間の翻訳)など、一歩踏み込んだ使い方が広がっている
- 活用方法は「社内問い合わせの一次対応」「属人ナレッジの復元」「リサーチ業務」「専門文書の読解支援」「書類の音声化」の5つに集約される
- ただし、データの過剰投入は回答精度を下げるので、投入するデータの判断・仕組みもセットで考える
導入事例は、自社でAIを活用するうえで一番のヒントになります。気になった事例があれば、ぜひ自社の業務に置き換えて試してみてください。