こんにちは、AIニュースアプリ Morning AI 開発者の矢野哲平です。この記事では、Googleの最新モデル「Gemini 4 Argon」が、ChatGPTやClaudeと比べてどうなのかを整理します。
Gemini 4 Argonは、9月30日に発表され、10月13日に一般公開されたGoogleの最上位モデルです。どのプランで使えるのか、APIの料金はいくらかといった話は、前回の記事 で整理しました。今回は性能の話です。Googleの公式の比較、外部の評価、そして私が実際に使ってみた感想から、Argonはどんな仕事に向いているのかを見ていきます。
この記事で解説するポイントは、主に次の3つです。
- スペックで比べると、ChatGPTやClaudeと何が違うのか
- Googleの公式比較と、外部の評価ではどう見られているのか
- Argonの得意なこと、不得意なこと
Gemini 4 Argonはどんなモデルか
まず簡単におさらいです。Googleは、Argonのことを「フロンティアモデル」と呼んでいます。最先端のモデル、という意味です。
何に向いているモデルなのかというと、Googleの発表 では3つの領域を挙げています。
- 実際の現場でのコーディング
- 金融や法務などの、専門的な知識を使う仕事
- サイバーセキュリティの防御
共通しているのは、どれも「長い時間をかけて、何段階もの作業をこなす仕事」だということです。つまり、チャットで一問一答するような使い方よりも、AIエージェントとして自律的に長時間動作するタスクに向いたモデルです。AIエージェントとチャットの違いは、AIエージェントとは? の記事で解説しています。
スペックで比べる:音声と動画を入力できるのはArgonだけ
Claude(Fable 5.1)とChatGPT(GPT-6 Astra)の最上位モデルをスペックで比べると、結構似たり寄ったりな部分があります。入力できるのはテキストと画像とファイル。APIのコストも同じ価格です。
ここにArgonを加えると、少し変わってきます。入力できる情報は、テキスト、画像、ファイルに加えて、音声と動画もインプットできます。つまり、音声や動画もAIに処理してもらえる、ということです。
Claude Fable
GPT-6 Astra
Gemini 4 Argon
テキストなど
音声
音声非対応
音声非対応
動画
動画非対応
動画非対応
テキスト・画像・ファイルは3つとも入力できます。音声と動画を直接渡せるのは、3つの中ではGemini 4 Argonだけです。
Claude Fable
GPT-6 Astra
Gemini 4 Argon
テキストなど
音声
音声非対応
音声非対応
動画
動画非対応
動画非対応
テキスト・画像・ファイルは3つとも入力できます。音声と動画を直接渡せるのは、3つの中ではGemini 4 Argonだけです。
入力できる媒体の比較。音声と動画はArgonだけが受け付ける
もう1つの違いが価格です。ClaudeやChatGPTに比べて、APIの価格はだいたい5分の1くらいになっています。ただし補足すると、この安い価格は発売記念の価格で、11月30日までの期間限定です。12月1日からは今の2倍の価格に値上げされることが、すでに発表されています。それでも、値上げ後の価格はAstraやFableより安いです。具体的な金額は 前回の記事 にまとめています。
一旦整理すると、GoogleのArgonは、FableやAstraと比べて、入力できる媒体が多く(音声と動画も処理できる)、APIのコストも安い、ということになります。
Googleの社内事例:Chromeのコード整理とロボット
Googleは、Argonを社内でどう使っているかの事例もいくつか公開しています。Google自身の発表なので多少割り引いて見る必要はありますが、面白いので紹介します。
1つ目が、Chromeのコード修正です。私たちが普段使っているChromeのブラウザのプログラムは、全部で4,000万行くらいあるそうです。そのうちの約600万行分の整理をArgonにやらせたところ、人間がやると数か月かかる作業を数週間で終わらせた、としています。
Argonコードを整理
約600万行分を整理(全体の約15%)
600万行全体
人間がやると数か月Argon数週間
Argonコードを整理
約600万行分を整理(全体の約15%)
600万行全体
人間がやると数か月Argon数週間
Googleの社内事例。Chromeの約4,000万行のうち約600万行分の整理をArgonに任せ、数か月かかる作業を数週間で終えたとしている
もう1つがロボットの事例です。人間の動きをArgonに見せて、そこから体の動きや物理的な条件を読み取る。それからシミュレーションのプログラムを作って、実際の人型ロボットに動きを移す。数週間かかるシミュレーション作りが、数時間になったとしています。
こうしたGoogleの事例は、普段の私たちの仕事からはピンとこない部分もあります。ですが共通しているのは、「大量の資料やデータを読んで、長い時間考えて、成果物まで作る」という流れを、Argonは高いレベルで行える、ということです。チャットで一問一答するより、仕事を丸ごと任せるAIエージェントのような使い方に向いています。
ちなみに、Argonでは回りくどい表現や同じ内容の繰り返しが減り、答えがより直接的になったとGoogleは説明しています。また、Gemini 4のシリーズは今後ほかのモデルも出てくるそうで、Argonの下にFlash系の軽いモデルも控えていると思われます。アルゴンが元素の名前であることを考えると、より軽い気体の名前で登場するかもしれませんね。
Googleの公式比較:19項目中、14項目で1位
ではここから、ChatGPTやClaudeとの違いを見ていきます。まずはGoogleの公式の比較です。
Googleは、OpenAIのGPT-6 Astra、AnthropicのClaude Fable 5.1、Claude Opus 5.5の3つと比較した表を公開しています。あくまでGoogleが発表している内容なので、その点は留意して見る必要があります。
全部で19項目あって、Argonが1位(同率1位を含む)を取ったのが14項目です。数字だけ見ると、かなり強いです。
項目
19項目中で1位(同率を含む・Google公式)
約分の1
テストにかかった費用(他社の上位モデル比)
約分の1
APIの価格(11月30日までの導入価格)
項目
19項目中で1位(同率を含む・Google公式)
約分の1
テストにかかった費用(他社の上位モデル比)
約分の1
APIの価格(11月30日までの導入価格)
Gemini 4 Argonを数字で見る。Googleの公式比較では19項目中14項目で1位、費用と価格は他社の上位モデルよりかなり安い
特に強いのが、金融や法務などの専門職の仕事を評価する項目です。金融アナリストの仕事をAIエージェントにやらせる課題や、法務の調査や起草をやらせる課題で、他社に大きく差をつけています。あとは、長い資料を読んで情報をたどる課題、長い動画を理解する課題、科学の実験系の課題でも1位でした。
一方で、負けている項目もあります。
| 課題 |
上だったモデル |
| ターミナル系のコーディング課題(AIが自分でコマンドを打ちながらコードを書く) |
Claude Opus 5.5 |
| 難しいソフトウェア開発の課題 |
GPT-6 Astra |
| パソコンの画面を操作する課題 |
GPT-6 Astra |
公式の発表なので参考として見る必要はありますが、多くの項目でArgonが他社より良い結果を残していて、特に強いのが金融や法務など専門職のタスク、ということです。
外部の評価①:Artificial Analysis(総合的な賢さ)
次に、外部の評価です。まずは Artificial Analysis の、総合的な賢さのランキングから。
結論から言うと、総合1位は変わらずClaude Opus 5.5のMaxでした。その下に、Claude Fable 5.1 Max、GPT-6 Astra Max、Gemini 4 ArgonのHighが横並びで並びます。トップグループには入ったけれど、1位ではない、という評価です。
総合的な賢さ(Artificial Analysisの順位)
Opus MaxClaude Opus 5.5 Max
1位Fable MaxClaude Fable 5.1 Max
トップ群Astra MaxGPT-6 Astra Max
トップ群総合的な賢さ(Artificial Analysisの順位)
Opus MaxClaude Opus 5.5 Max
1位Fable MaxClaude Fable 5.1 Max
トップ群Astra MaxGPT-6 Astra Max
トップ群
総合1位はClaude Opus 5.5 Max。その下にFable・Astra・Argonが横並びで、Argonはこの中で一番安い。棒の長さは順位の目安で、点数そのものではない
ここで面白いのがコストです。Artificial Analysisは、テストを一通り解かせるのにかかった費用も出しているのですが、Argonは3分の1くらいの費用で済んでいます。賢さはトップグループ、でもコストはその中で一番安い、という立ち位置です。Opus 5.5がどういうモデルかは、GPT-6 Sol・LunaとClaude Opus 5.5の比較記事 で触れています。
外部の評価②:長時間のタスク
2つ目が、スライドを作る、調査レポートを書く、バグを直す、といった長時間のタスクを評価するベンチマークです。
10月14日版の結果を見ると、総合1位はClaude Fableでした。Argonは、今回比べた中では下の方です。
ただ、項目別に見るとはっきり得意不得意が出ています。
| 項目 |
Argonの結果 |
| 推論(深く考える課題) |
1位 |
| データ分析 |
1位 |
| ブラウザを操作して情報を集める |
上位 |
| 長時間のエージェント作業 |
ClaudeやGPTが上 |
| デザイン |
ClaudeやGPTが上 |
| コーディング全体 |
ClaudeやGPTが上 |
ここは少し意外でした。深く考える力は一番なのに、長いエージェント作業を安定してやり切る力ではClaudeやGPTに負けている、ということです。FableとAstraの比較は こちらの記事 にまとめています。
外部の評価③:Vals AI(実務寄りの課題)
3つ目が Vals AI の評価です。金融、法務、税務といった、実務寄りの課題を集めたベンチマークです。
ここでもArgonは、金融のAIエージェントの課題で1位。実務系の総合指標でもトップクラスです。「専門職の仕事に強い」というGoogleの主張は、外部のデータでも裏付けられている形です。
実際に使ってみた感想
私も実際にArgonを使ってみました。
コーディングに関しては、Argonは他のモデルに比べると少し弱い、という話もありました。ただ、私がテストしている感じでは、そこまで違いは感じませんでした。割と簡単なタスクでは、特にモデルの違いは感じないレベルかもしれません。Argonの方がコストが安いことを考えると、選択肢としては十分ありだと思います。
あとは文章作成やレポート作成のタスクでも、結構日本語が自然だなと感じました。
Argonの得意なこと、不得意なこと
ここまでの話を整理します。
|
内容 |
| 得意① |
金融や法務のような、専門的な知識を使う仕事。公式の発表でも外部の評価でも、一貫して強かった領域 |
| 得意② |
音声や動画の理解。他社のモデルと比べて唯一、動画と音声を渡せる |
| 得意③ |
コストが安い。11月30日までの発売記念価格で約5分の1。他社に比べて現時点では一番安い |
| 不得意① |
ターミナルで自律的にコードを書き続けるようなエージェントコーディング。今のところClaude Opus 5.5やGPT-6 Astraの方が評価が高く、デザイン系もClaudeが上 |
| 不得意② |
日常の軽いタスク。ちょっとした質問やメールの下書きなら、Flash系のモデルで十分 |
音声や動画の理解は、アイデア次第でいろいろな使い方ができると思います。たとえば、パソコンの操作画面を録画してArgonに渡し、「この動画から業務マニュアルを作成してください」と頼む、といった使い方です。動画と音声は、GPT-6 AstraもClaude Fableも入力として受け付けないので、ここはArgonの強みが出るところです。
一方で、普段 Claude Code や Codex といったコーディング系のツールを使っている人は、わざわざArgonに乗り換える必要はないと思います。また、Argonは「ここぞ」という重い仕事、たとえば大量のファイルを処理するときや、金融や法務のような専門的なタスクに使いたいときに活躍するモデルです。軽いタスクはFlash系で十分で、Flashシリーズについては Gemini 3.7 Flashの記事 で触れています。
まとめ
- Gemini 4 Argonは、Googleが一般公開した最上位モデルです。ChatGPTやClaudeと比べて、音声と動画も入力でき、APIの価格も安い(11月30日までは約5分の1、値上げ後も他社より安い)のが特徴です。
- 外部の評価では、総合の賢さはトップグループに入ったものの、1位はまだClaudeでした。ただし、深く考える力や、金融・法務などの専門職の仕事ではトップクラスで、コストはその中で一番安いです。
- 不得意なのは、ターミナルで自律的にコードを書き続けるようなコーディングエージェントの使い方です。ここはClaude Opus 5.5やGPT-6 Astraの方が評価が高く、Claude CodeやCodexを使っている人は乗り換える必要はありません。
Google AI Proプラン以上の方、またはAPIで試せる方は、金融・法務のような専門的なタスクや、動画・音声を渡す使い方で、ぜひ一度Argonを試してみてください。